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2階 2002年4月開園した園舎から国の指針値の10倍を超える化学物質・トルエンが検出された大阪府堺市東湊町5丁の湊保育園で、専門医らの調査によって園児19人がシック ハウス症候群と判断された。園では床の張替えを行って接着剤そのものを取り除いたが、トルエンの濃度は指針値を下回らず、別の化学物質まで指針値を上回った。その後、園はNPO「シックハウスを考える会」の支援を得て再び床の張替えを決断、今度は最先端の装置を使ってそれぞれの建材から放散する化学物質の量を測定してから建材を選ぶことにしている。

住宅建材が発散する化学物質が原因で発症するシックハウス症候群の初の法規制として、建築基準法が改正される、改正建築基準法は2003年7月に施行されるが、規制を受けるのは合板や壁紙などに含まれるホルムアルデヒドとシロアリ駆除剤のクロルピリホスだけである。2種のうちクロルピリホスは全面使用禁止となるが、ホルムアルデヒドは、それを発散する建材の面積制限をする措置と、一定の条件を満たす機械換気設備の設置義務のみ。人体に影響を与える化学物質が13種もあるというのに、2種の規制だけで果たして実際に効果があるのかどうか。
シックハウス症候群〔Sick House Syndrome〕とは
居住者が、住宅建材から室内に発生する揮発性化学物質が原因で、めまい、吐き気、頭痛、平衡感覚の失調、呼吸器疾患など体の不調を感じる事やいろいろな要素に起因する健康影響が「シックハウス症候群」と呼ばれています。
どこに原因があるのでしょう?
 近年、建築は構法や材料面において著しく進化してきました。意匠性(デザイン)、耐久性(化学的安定・防腐・防蟻など)、安全性(防火・防炎など)、施工のしやすさや経済性など、さまざまな技術が開発され、多くの新しい化学物質が利用されるようになりました。
 また、近年の住宅は気密性が高まっているため、十分に換気をしないと室内空気中に放出される化学物質は蓄積して、その濃度が高まることがあります。さらに、エアコンの使用によって窓を閉めきる時間が延びていることなども、室内の空気環境を悪化させる要因といえるでしょう。
住宅に使われている化学物質
主な汚染物質及び薬剤の人体影響

■ホルムアルデヒド
無色の刺激性のある可燃性の気体で、水に良く溶け、約30%の水溶液は通常ホルマリンと称しています。ホルムアルデヒドは、殺菌作用があり、従来より温室や土壌の燻蒸剤等に利用されるほか、標本保存剤、消毒剤、防腐剤として用いられています。
居住環境におけるホルムアルデヒドの発生源としては、建材、家具、家庭用品、喫煙及び暖房器具の使用等が考えられます。特に、合板・パーティクルボードの接着には尿素-ホルムアルデヒド系接着剤が多用されています。ホルムアルデヒドの人に対する影響は、主に目、鼻、及び喉に対する刺激作用で、具体的には、不快感、流涙、くしゃみ、咳、吐き気、呼吸困難等の症状が表れます。また、動物(ラット)で発がん性が認められています。

「健康な住まいづくりのためのユーザーズガイド」より
■ VOC(Volatile Organic Compound)
揮発性有機化合物の総称で、アルカン類、芳香族炭化水素、テルペン類、ハロカーボン類、エステル類、アルデヒド・ケトン類などが含まれます。VOC には、実に多くの物質が含まれ、いずれも常温で液体ですが、揮発しやすく呼吸によって肺から取り込まれ血液中に吸収されることになります。

東京都立衛生研究所資料
■トルエン・キシレン
無色の液体で塗料などに使われますが、高濃度では倦怠感、知覚異常、吐き気を起こします。

■パラジクロロベンゼン
無色で臭気のある可燃性の気体で、眼、皮膚、気道を刺激します。長期曝露の影響には、肝臓・腎臓及び血液に影響を与えることがあります。防虫剤などに含まれる場合があります。

■防蟻剤、殺虫剤、防ダニ剤
防蟻剤とは、イエシロアリやヤマトシロアリ等が木質材料を採食して、木造建築物の強度を低下させたり、資産価値を低下させることを防ぐため、土壌や木部に施す薬剤です。防蟻処理には、床下に種々の製剤形態の殺蟻剤を散布する方法の他に防蟻剤を含んだ種々の材料で土壌を被覆する方法があり、これらが主な発生源となっています。
畳やカーペット等に虫やダニが発生することを防止する目的で薬剤が施されている場合があります。これらの薬剤はごく微量ずつ空気中に放散します。また、スプレー式や加熱式の殺虫剤を使用すると室内空気中濃度が急増します。

防蟻剤、殺虫剤、防ダニ剤のほとんどは農薬として用いられるもので、かつては有機塩素系農薬が主体でしたが、現在は有機リン系、カルバメート系、ピレスロイド系のものが大部分です。これらの薬剤には急性毒性、神経毒性、免疫毒性、変異原性・発がん性において注意すべき物質が含まれており、事故事例がいくつか報告されています。
クロルピリホスやホキシムなどの有機リン系薬剤では、急性中毒症状として軽度の場合、倦怠感、頭痛、めまい、悪心、嘔吐などの症状を示す場合があります。ペルメトリンなどのピレスロイド系薬剤では、急性中毒症状として軽度の場合、頭痛のほか、くしゃみ、鼻炎などの症状を示す場合があります。

なお、平成15年7月までに、建築基準法により、クロルピリホス(防蟻剤)の使用は禁止になります。

東京都立衛生研究所資料

■可塑剤
可塑剤はプラスチック製品や接着剤の樹脂を軟らかくするための添加剤です。家庭では塗料、接着剤、壁紙、合成皮革、ホース、電線など様々な用途に使用されています。ビニル製品などにはフタル酸エステル類やリン酸エステル類などの可塑剤が利用されている場合があります。吸入あるいは接触した場合、最も多く利用されるフタル酸ジオクチルについては5mg/m3程度で目、気道を刺激することがあることが報告されています。。

「健康な住まいづくりのためのユーザーズガイド」より
空気汚染防止対策は
化学物資は建築材料や家具などの耐久性、難燃性などの性能を確保するために用いられており、ただちに100 %取り除くことがむずかしい現実があります。
新築やリフォームは、空気汚染対策に関する目標や対策レベルについて、設計・施工者と綿密に打合せを行い、両者の合意のもとに、家づくりを進める必要があります。効率的な対策の実施やトラブルの回避のためには、設計から施工までの間の適切な時期に、両者の間で確認や合意をしながら進めることが大切です。


厚生省(現厚生労働省)では、実態調査において室内空気中で高い汚染を示した 化学物質などから、以下の11物質について指針値を示しています。この指針値は、現状において入手可能な科学的知見に基づき、人がその化学物質の示された濃度以下のばく露を一生涯受けたとしても、健康への有害な影響を受けないであろう、との判断により設定されています。(ただし、ホルムアルデヒドについては、短期間のばく露によって起こる毒性を指標として策定されています)

住宅における化学物質の室内濃度に関する指針値



2003年7月に施行される、改正建築基準法



詳しくは下記でご覧下さい。
・改正建築基準法に基づくシックハウス対策について(国土交通省)
化学物質の少ない建材
(1)木質材料
合板、構造用パネル、フローリングなどについてはJAS(日本農林規格)で、パーティクルボードや繊維板などについてはJIS(日本工業規格)でホルムアルデヒドの発生量が区分されています。
平成15年2月27日告示

財団法人日本合板検査会

(2)壁装材料
壁紙の公的な規格はJISA6921ですが、環境・健康への関心の高まりから、現在、ドイツの品質検査規定RALを含め、SV、ISM の3つの自主規格が存在します。それぞれの指針値を表に示します。なお、測定法が異なるため一律に比較はできません。

壁紙に関する品質基準
壁紙には日本工業規格(JIS)による基準設定がありますが、さらに生活環境や自然環境への影響を配慮して設定された様々な自主基準も設けられています。代表的な基準には以下のようなものがあり、その規格が認定 した適合商品にはそれぞれのマークが表示されます。
●RALマーク
ドイツの壁紙メ−力−14社によって設立された“ドイツ壁紙 品質保証協会”とRAL(ドイツ品質保証表示協会)が協力 して制定した壁紙の品質と、健康と環境に配慮した原料の仕様規定
●Eマーク
ヨーロッパを中心に10数カ国60社以上のメーカーが加盟するIGI(国際壁紙生産者協会)が規定した安全基準。
●ISMマーク
壁装材料協会(WACOA:Wallcoverings Association of Japan)が欧州規格(EN)や国際規格(ISO)等を検討し制定 した規定。健康や安全を脅かさない高品質なインテリア商品の供給を目的とし、適合商品であることを証明するために必要な事項が定められている。

(3)塗料および接着剤
建築材料の中でも塗料や接着剤などからは、有機溶剤(VOC)が揮発して塗膜が乾燥し接着剤が硬化します。内装用には、主に有機溶剤を利用しない水性エマルションの塗料が多用されます。これらにしてもまったくVOC を含有していないということではありません。成膜助剤、可塑剤、製造時から残存するVOC などが少量ながら含まれています。
天然樹脂などの材料を使用した建築材料
天然材料を使用しているため人体に対する安全性が高いと考えられる材料です。

木材塗料では植物油から作られ厚生省の食品衛生試験にも合格したものや、備長炭入り天然畳、ダニの忌避効果、防カビ・防腐効果、脱臭効果などがある木炭を国産ワラで挟んだものなど、防虫防カビ効果を持った素材を併せて使った畳、ドイツ製の壁紙ルナファーザーは再生紙80%以上と木片で作られ水性塗料を何度も塗り重ねることができます。また、木材資源の保護を目的に作られたケナフ壁紙。吸水性、調湿性に富んだ珪藻土等が注目されています。ウールカーペットには、室内の汚染物質を吸着して、空気を浄化する機能があることも分かっています。
また、本来持っている木の能力を活かして内装壁を板張りにするなど、木の使い方も見直されてきました。
健康な住まいづくり
1) 設計
設計に当たって、居住者の体質・生活習慣・周囲環境・基本予算などを設計者と充分に話し合い、居住者が自分で内容を確認することが大事です。また、適切な材料選択、効率的な通風・換気計画、使用する建材や塗料、薬剤などについて化学物質の資料やカタログ等も確認しましょう。

2) 施工
まず、設計通りの建材や薬剤などが正しく使用されているかどうかを確認することが重要です。一般の方には分かりにくいので信頼を置ける監理者を選定し一緒に現場で確認することが大事です。設計どおり施工されている場合でも、汚染物質の人体への影響は個人によって差がありますから、刺激臭がないかどうかを自分自身で確認することも重要です。不安が生じたら設計者や監理者に確認しましょう。

(1)床からのガス状物質の発生
 フローリングについて、塗膜面及び内部に含浸した接着剤によるガス状物質の発生か想定されている。 同様に、ビニルタイルについては、表面、または、継ぎ目から接着剤由来のガス状物質が発生すると考えられている。

(2)壁、天井画からの発生
 ビニルクロスが石膏ボード上に貼り付けられている場合、ビニルクロスの継ぎ目から接着剤・下地材由来のガス状物質の発生が想定されている。また、ビニルクロスは、一般に、ガス透通性はないものと考えられるが、布クロスの場合では、ガス透適性があると考えられるため、表面からの発生も起こり得る。布クロスでは、石膏ボートの上に貼り付けられている場合、表面のみならず、継ぎ目からのガス発生も考えられる。

(3)巾木からの発生
 ビニル巾木の場合、壁や床と巾木の隙間から、接着剤由来のガス状物質の発生が想定されている。

(4)その他、額縁等からの発生機構も明らかにされている。詳しくは引用文献を参照のこと。

「健康な住まいづくりのための設計施工ガイド」より
3)入居
入居までは、カーテンを開けて日射をいれたり、冬には暖房して室内温度を上げて汚染物質の揮発を促しましょう。収納の扉も開けましょう。同時に、窓や換気口を開けて厨房などの換気扇を運転して換気量を増やし、汚染物質を屋外に出すようにしましょう。入居時は、それまで閉め切った状態が続いていた場合には特に注意が必要です。窓を開け、換気扇を作動させて十分な換気を行ってから入居するようにしましょう。

住まいに何を求め、どんな住み方をしたいのか。住宅はいまや創るのではなく、買う時代となったかのようです、沢山の広告にも環境に優しい宣伝文句が並べられています。しかし、自分自身の考えを持たないで流行の言葉に流されると何年後かには後悔するかもしれません。シックハウス問題も、材料の選定はもちろん重要ですが、昔から住宅は「夏を旨とすべし」と言うように風をうまく取り入れることが大切なのです。
先日、我が家の棟札を調べていて分かったのですが3枚出てきました、初代から約300年、100年に一度の建て替え周期です。まだまだ使えそうですが.....

住宅は何十年と使うものです。そしてそれは、建築主と設計者あるいは工務店との二人三脚で作り上げていくものなのです。
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